ヴァイオリンとピアノのゆうべ
昨夜は、ヴァイオリニスト・大谷美佐子さんとピアニスト・奥山幸恵さんをお招きしての「ヴァイオリンとピアノのゆうべ」と題したコンサートを開催いたしました。お迎えする僕たちの側の方が、直前に様々な行事予定が重なって、決して万全な状態でなかったにも関わらず、当店久々のクラッシックを楽しみにされたお客様で、開演30分前にはびっしり満席の状態に。
モーツァルトの「メヌエット」から幕を開けたコンサートは、クラッシックの名曲から、日本の古い曲、アイルランド民謡やスペインの曲…と、時代や世界の垣根を越えて、春の足音が聞こえてくるような、光が差し込んでくるような曲を中心に届けられました。
大谷さんのヴァイオリンは、演奏の素晴らしさはもちろん、聴く人の心に気取りなく溶け込んでいく温かみがあって、自然に引き込まれてしまうもの。ただ、サラサーテの「アンダルシア」のようなエモーショナルな演奏では、名門ユニット「イリス弦楽四重奏団」の一員ならではの、圧倒的な演奏力を如何なく発揮して、聴衆を釘付けにしてくださいました。
奥山さんのピアノも、いつにも増して伸び伸びと、しなやかに響き渡っていて、大谷さんとの共演を心から楽しんでいるのが、音色からも伝わってきました。「さくら」「ふるさと」のような、日本人の心にストレートに響く曲では、繊細な美しさを音に乗せる、真骨頂とも言える持ち味が生かされていたし、フォーレの「夢のあとに」の伴奏では、彼女の演奏家としてのこれまでの歩み、様々な舞台での姿が、脳裏に次々と蘇ってきました。
アンコール曲の「上を向いて歩こう」の切ないメロディを聴きながら、いろいろな思いを胸にした人たちへの思いが、丁寧に織り込まれているのを感じたし、コンサート全体を通して、温かみや慈愛に満ちた、とても優しい雰囲気が溢れていました。もちろん洗練された音楽だけれど、そこを目指したわけではない、その近くにある、誰かの心にそっと寄り添うような温かな音楽を描こうとしている…。そんなところに、僕たちはいつまでも惹かれ続けるんだと思います。
ぜひまたこの余韻の続きを聴かせてくださる日を、今から楽しみに待っていたいと思います。 |
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